異色さが魅力のディズニー作品・ノートルダムの鐘

異色さが魅力のディズニー作品・ノートルダムの鐘

久々となるディズニー作品解説記事、今回解説するのはマイナーながら人気が高い作品・ノートルダムの鐘です。

マイナーと言っても、劇団四季やら以前放送された金曜ロードショーやらで何だかんだ知名度はある方ではないでしょうか?

上映された時期がヘラクレスと1年違いであり、私もこの2作は続けて視聴したので以前解説したヘラクレスに続けて本作を解説したくなりました。

ノートルダムの鐘は私としても結構好きな作品の一つですね。私自身はどちらかというとアラジンとかヘラクレスみたいな楽しげな作風の映画が好きなのですが、ノートルダムの鐘はディズニーっぽくない要素も多く見られてまた一回り違う魅力的な作品に仕上がっているなと思います。

何が魅力か、何が他作品と異なるのかなどを解説していきます。

今だったら作られないようなある意味貴重な映画

本作は作品名通りノートルダム大聖堂が存在するパリを舞台とした作品です。

皆さんはパリと聞くとそれこそファンタジーの映画やゲームでよく見られる中世ヨーロッパのような世界観が思い浮かぶと思います。建物が総じてキラキラしていて食事やファッションなどもオシャレなイメージと言えば良いでしょうか。

しかし本作ではそのような”陽”の要素が見られません。トプシーターヴィーが当てはまるかなというくらい。圧倒的に“陰”の要素の方が強い。

ジプシーへの差別、悲惨な目に遭う人々、人間のリアルな心情がよく出たキャラクター、宗教的な重い音楽など。

今だったらまあ作られないだろうな…というほど内容が中々エグい。よく金曜ロードショーで放送したなという感じですが、ここまで暗さを全面的に描いた作品が珍しいからこそ、一定数のファンがいてリクエストも多かったのでしょうね。

私もシリアスな話は好きなのでどんな作品か気になって本作を視聴したというのがあります。ディズニーがあまり好きでない人でも視聴してみる価値はあるかと。

厳か系BGM好きは絶対本作好き

本作の楽曲はディズニー作品の中でも明らかに一味違うと感じています。端的に言えば厳か、荘厳。

私はそういった系統の曲が好きでゲームでも教会、城等で流れる曲は好きになりやすくて。ノートルダムの鐘自体大聖堂が舞台だし宗教色強い話なのでそんな世界観とも見事にマッチしていますね。

特にオープニングが大好き。私はディズニーマニアでもないのでディズニー作品を沢山知っている訳ではないのですが、ノートルダムの鐘のオープニングは曲、演出共に今のところ断トツで良いと感じています。

曲が重厚で一気に引き込まれるし、この曲の最中で当時のパリの背景、主人公の生い立ち、ヴィランズのキャラ、本作のテーマなどストーリーを描く上で必要な土台を全て表現してしまいますからね。改めて書いていても本作のオープニングは良すぎる…

特にフロローがジプシーを馬で追っかけるシーンは盛り上がる曲調も相まって何度視聴してもテンションが抑えられません。

楽曲としては「僕の願い」や「ゴッド・ヘルプ」辺りが有名でしょうが、個人的に大好きかつ取り上げたいのが「罪の炎」ですね。良曲揃いのヴィランズソングの中でも罪の炎はお気に入りベスト3に間違いなく入ります。

余談ながら私はファンタズミックのヴィランズシーンが凄く好きなので、罪の炎を初めて聞いたとき「これファンタズミックで使われている奴じゃん!!」とテンションぶち上がってしまいましたね。この曲が好きなのはそういう思い入れ補正もあります。

ただでさえ荘厳な曲が好きなのに、この曲は更にヴィランズソングあるあるのダークさを交えてきて、ダークソング大好きな身としては好き×好きによる相乗効果が凄い。

「奇跡の法廷」もリズミカルなのにちょっと暗い感じがして良き。とても良い曲なのに短いのが残念です。やっぱりノートルダムの鐘、総じて楽曲良いですねえ…

映像、演出、音楽、歌。いちアニメーション映画にも関わらずまるで舞台を見ているような感覚に陥りますね。

それもあってノートルダムの鐘の劇団四季めちゃくちゃ見たいなあ…だってここまで四季映えする作品もないでしょう。他有名ディズニー作品を差し置いて本作を劇団四季にチョイスした人はマジで天才。

美女と野獣にも通ずるテーマ

本作は美女と野獣制作のスタッフが作った作品となっています。それもあってか、フランスが舞台であるとか全体を通したストーリーのテーマとかも似ているなあと感じています。

美女と野獣は恋愛ストーリーとしては納得の人気だと思う – ルルアリーのお気楽ブログ (mypaselife.com)

「人を見かけで判断してはいけない」ことが教訓だと美女と野獣解説記事で書きましたが、それは本作でも同様のことが言えると思います。

カジモドが大衆から総攻撃を受ける場面なんかはトラウマになっている人も少なくありません。なまじ祭りのシーンが楽しい雰囲気だから総攻撃されるという落差が余計しんどさを増しています。 

野獣は最初の頃は暴れ放題だったのに対し、カジモドは終始良い奴だからこそ悲惨な目に遭っていると見ていて辛くなりますね。

それに野獣って何だかんだ人間じゃないし、人間状態だとイケメン王子じゃないですか。カジモドは人間且つ醜い容姿というのが今までにない設定です。

カジモドもディズニー作画のおかげか、醜いと言っても割と愛嬌ある見た目にはなっているので嫌悪感持つ人はそんなにいないと思いますが。

まあ要するにテーマとしては「怪物というのは見た目でなく心で決まる」ということです。「Who is the monster and who is the man?」という問いかけからもこれがテーマと見て間違いないでしょう。

作品を見た人なら分かるとは思いますが、本作の怪物はフロローです。正直そういうテーマにしたければフロローをガストンみたくもう少し若いキャラにしても良かった感はありますが。見た目も心もイケメンなフィーバスとも良い対比になりますし。

でもあの爺さんビジュだからこそエスメラルダに対する思いがより一層気持ち悪さ増してて良いっていうのもあるので難しい。

美女と野獣もノートルダムの鐘もミュージカル要素が非常に強いですし、こういった作風の作品を作るのが得意なスタッフなんでしょうね。良い味出ています。

エスメラルダとフィーバスの魅力

本作のヒロインであるエスメラルダと警備隊長フィーバスがどちらも人間としてよく出来たキャラです。主人公カジモドも終始良い奴ですが、ストーリー初期の段階だとかっこいい面はあまりないです。

そんなカジモドが終盤で勇敢だったりカッコイイ活躍をしたりするようになるのですが、個人的にこれは自立していて色々な意味で”強い”エスメラルダやフィーバスを見てきたから成長できたのかなと思います。

エスメラルダは個人的にディズニー作品のヒロインの中でもトップクラスに好き。大人らしさとセクシーさ全開の容姿も好きだし、誰に対しても優しく且つ強い女性として憧れてしまいます。

特にフロローの「黙れ!」に対して「黙らない!」って返すところめちゃくちゃ好き。これでキュンと来る人は多いはず。

フィーバスが川に落ちた際に自分で泳いで助けに行くなどアグレッシブさも頭一つ抜けています。

見た目、性格共にジャスミンが好きな人は大体エスメラルダも好きになるのではないかと考えています。かくいう私がそうなのですが。ジャスミン好きはエスメラルダの魅力に気づくべし。

そしてフィーバスですが彼もかっこいいです。最初はややヴィランズ寄りのキャラなのに、自分の気持ちを優先してヴィランズに反抗する流れがヘラクレスに登場するメグと少し似ています。

あと「ポジション的に嫌な奴として描かれそうだけど、実際は主人公と仲が良くて性格的にも良い奴」という意味ではプリンセスと魔法のキスに出てくるシャーロットにも似ているかも。

フィーバスってディズニー作品であまり見ない立ち位置のキャラだからそういう意味でも特別感があって良い。

そんなわけでエスメラルダもフィーバスも魅力的なキャラクターなのですが、それ以上に個人的に本作を語る上で絶対に欠かせないキャラがいましてですね…

フロロー判事の圧倒的なキャラの濃さ

私がノートルダムの鐘を好きな理由のうち、かなり大きなウェイトを占めているのが本作のヴィランズ・フロローです。

ヴィランズって大体動機がハッキリしているじゃないですか。「自分が1番美しくいたい」とか「国を支配したい」とか「毛皮のコートが欲しい」とか。それに対しフロローは動機がかなりふらふらしている。

よく言われることなのですが、彼はディズニーヴィランズとしては珍しく自分のやっていることを正義だと信じて悪の自覚がないタイプの悪役。

それもあって他のヴィランズと比べて妙に生々しいというか、マレフィセントやアースラのような悪役としてのかっこよさがない。

何より彼を見た後だと同じく(権力目当てとはいえ)ヒロインに執着するジャファーが可愛く見えるレベルでフロローのエスメラルダへの執着ぶりはキモいw

超ざっくり且つ省略気味ですが、以下がストーリー中で見られるフロローの心境変化です。

(1)ジプシーを迫害してやる!

(2)神の目が怖いのでカジモドは軟禁しておこう…

(3)エスメラルダ!このジプシーは約束を破ったカジモドを何救ってるんだよ

(4)でもどうしよう、エスメラルダに恋しちゃった

(5)エスメラルダを探すためにパリを燃やしてやる!

(6)エスメラルダが自分を振った!やっぱりコイツは死ぬべき!

(7)エスメラルダを助けようとしたカジモドも殺してやる!

自分で書いてて笑うしかないよこんなの。コイツ凄いなマジで。端的に言って重度のヤンデレ。そして人を探すために無関係の人々を巻き込みまくって炎を付ける様はサイコパス。

コイツの暴れっぷりのおかげで罪の炎以降ストーリーが一気にヒートアップする感じがマジで好き。ヴィランズで言うとクルエラも好きなのだけどクルエラといいフロローといい、とち狂った感じの悪役が好きなのかも。

2人とも何の魔力も特殊能力もないただの人間だというのにねw

その一方で「ただ単純な”悪役”ではない」「彼なりの正義がある」「人間臭い」といった意見もあって色々と深いキャラだなと思います。

後述しますが本作って結構塔の上のラプンツェル要素があって、フロローもゴーテルっぽさがあります。ゴーテルって同情できる・できない派がでよく争いになる印象があって、ぞれと同様な感じでフロローも人によっては純粋悪と決めつけられないと思います。

まあ20年もの間カジモドを一人で育て上げたのは普通にようやったなとは思いますが何だかんだウザ憎めないおかん的発言も多いゴーテルに対し、フロローってコミカル要素もないし中盤からの行動が色々とヤバすぎるので私はただの外道だと思っていますがね。

フロロー、嫌いだという人の気持ちもよく分かりますが私は好きなキャラですね。悪役キャラの悪役ぶりはストーリーの盛り上がりに直結する。

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本作の個人的欠点二つ

上述したとおり、ノートルダムの鐘は今まで見てきたディズニー作品の中でもかなり上位に来る良作だと思っています。しかしトップ争いはできないかなというのが正直な感想です。その大きな理由が二つあります。

一つ目は歌が多すぎるという点。

美女と野獣の感想でも書きましたが、あまりに歌が多いとダレます。そして本作はディズニー作品の中でも歌がかなり多い部類だと思います。

美女と野獣に比べたら「ここ歌いらんだろ」というシーンは少なかったのでまだマシですが。

とはいえ上述した通り音楽は重厚さあって中々聴き応えある物が多いですし、ミュージカル要素が好きな人であればさほど大きな欠点にはならないかと。問題は二つ目でしょう。

二つ目の欠点はやはりあの結末です。

結局エスメラルダはカジモドではなくフィーバスを選ぶという結末には賛否が激しく分かれる要素となっています。

顔面云々を抜きにしても世間を知らなすぎるカジモドと違って、フィーバスは様々な経験を積んできた大人ですし”強い”人物なのでエスメラルダが惚れるのも仕方ないとは思います。

ただストーリーはカジモド視点で進んでいて視聴者としては必然的にカジモドに感情移入してしまうため、エスメラルダがフィーバスと良い関係になってきている所を見ているとどうしても辛くなってしまいます…

そもそもこの作品って恋愛が全面的に出た話という訳じゃないのだから、エスメラルダは誰ともくっつかずにカジモドともフィーバスとも対等な関係で終わった方が良かったんじゃないかと思うようになりました。

誰と結ばれるか問題以外の点でも、そもそもパリの民衆はカジモドを虐めた件についてしっかり謝罪しろよって感じもするし…というかジプシー連中は分かるけど町の人達って何かカジモドに助けられた要素あったっけ?

原作の結末がアレなのでこれでも大分良いエンドにした努力は伝わってきますけどね…カジモドはこの話を経てこれからも人間の世界を知っていくんだという方向でのハッピーエンドなのでかなり渋い。

この良くも悪くも考えさせられる結末はある種本作を象徴するような描写ですね。誰からも好かれる旨味成分ではない、好き嫌いが分かれやすい苦味成分に軸を置いた物語。

あと面白要素を求める私としてはコミカルさが薄いというのも欠点ではありますが、そもそもこの作品はそういうのを求めていない作品だと思うので特に減点要素にはならないかな。

ガーゴイル達がコミカル担当的立ち位置なんでしょうけど、ぶっちゃけストーリー的には居ても居なくても影響ない存在なので正直どうでもいい。

中盤から終盤にかけてハラハラする展開が続いていただけに楽曲ガイ・ライク・ユーによる彼らの純粋な励ましに癒されましたね。なので何だかんだこいつらも気に入っているかも。

塔の上のラプンツェルっぽさもある

ディズニー作品の中におけるS級有名作品として塔の上のラプンツェルが挙げられます。ラプンツェルは大人気キャラですし、金曜ロードショーとかでもしょっちゅう放送されているので見たことある人は多いと思います。

本作はそんな塔の上のラプンツェルと構図的に似ている部分が多いです。

・ヴィランズが主人公の生い立ちなどを隠して親代わりに育てる

・外の世界に出ることを許されず、高い建物の中に十数年間閉じ込められていた

・外が気になって言いつけを破って外に出る

・外出がばれて育ての親からの怒りを買う

・再び閉じ込められるが本当に悪いのは育ての親だと強い意思で反発する

ノートルダムの鐘未視聴の方は、この箇条書きの要素を見て「まんまラプンツェルじゃん!」と感じたのではないでしょうか。

しかしあのフロローが育てたというのにカジモドはよく純粋に育ったなと思います。ちょっとこの点は「いやいやそうはならんやろ」と突っ込まずにはいられないので私的には微妙な設定だなあと感じていますが…

ゴーテルはラプンツェルに逃げて欲しくない明確な理由があるのでラプンツェルを大切に育てるのは分かるのですが。

まあこれら以外の要素は塔の上のラプンツェルと全然似ていないので同じ気持ちで視聴できるとは言い難いのですが、外に出る勇気や広い世界を知っていく大切さを学ぶという意味では作品を通して伝えたいメッセージは同じなのかなと思いました。

ディズニーらしくないと言われがちな本作ですが上述した「怪物というのは見た目でなく心で決まる」という要素も含め、メッセージ性は王道ディズニー作品に通ずるものがあります。その辺りは何だかんだ安心して視聴できる作品です。

狭い世界からパリ中を巻き込んだ壮大なストーリーへ

最初は大聖堂の中に閉じ込められているということもあって閉塞感があります。カジモドが外に出た後もエスメラルダが同様に大聖堂に閉じ込められたりするなど中盤まではあくまで大聖堂をベースにストーリーを展開していきます。  

ここもラプンツェルっぽいですね。塔から出て色々な人や場所に出会って少しずつ世界が広くなっていく面白さが塔の上のラプンツェルの魅力だと思います。

本作も特に罪の炎以降はパリ全体を巻き込むようなかなりスケールの大きい展開になっていきます。このメリハリが個人的に良いなと思います。

フロローがエスメラルダを探すためにパリ中焼き尽くすというぶっ飛んだ行動に取る故のスケールの広がり方だと思うのでやっぱりフロローは悪役として優秀です。

特に終盤における大聖堂周辺での民衆共の争いは目を離せない緊迫感で非常に楽しめました。

ラストのカジモド&エスメラルダvsフロローも、下がマグマの海という舞台もあって手に汗握るハラハラ展開。カジモドの高い身体能力が活きる名勝負ですし、フロローを敢えて見捨てないカジモドの人間臭さやホラーチックな最期を迎えるフロローなどあの短時間で見応えの塊で大好きですね。

まとめ

ノートルダムの鐘の魅力を様々な観点から分析して解説しました。

キラキラしたイメージとはかけ離れたシリアスな世界観に厳かな音楽、そしてヴィランズの悪役ぶりによる見ていて退屈しないストーリー展開など私はかなり好きな作品です。

全体的に華やかさに欠けていてディズニーっぽくなかったり、結末の癖が強かったりで一部微妙な点はありますが、それでも魅力的な作品であることには違いないです。

世間的にはややマイナーながらディズニーオタクをはじめ根っからのファンも多い本作、少しでも気になる方は視聴して損はないと思いますよ。

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