美女と野獣は恋愛ストーリーとしては納得の人気だと思う
3記事目となるディズニー作品紹介記事、今回は人気作品の一つである美女と野獣についてです。
2017年には実写映画が公開されていますし、ディズニーランドでは2020年に美女と野獣エリアが出来て大いに話題になっていますし、そのためか今なお人気の勢いがある作品という印象があります。
ディズニーアニメ作品初のアカデミー作品賞ノミネートということからも作品のクオリティーの高さは確証されていますね。
どの作品にしようか悩みましたが前回アラジンを書いたことを踏まえ「実写映画が大人気」「プリンセス作品」「アニメ版の公開時期が近い」などの共通点から今回は美女と野獣に決めました。
子供から大人まで楽しめるディズニーの名作・アラジン – ルルアリーのお気楽ブログ (mypaselife.com)
私はアクション多め、シリアスとコミカルのバランスが心地良い作風が好きなので、ゴリゴリに恋愛物として描かれている美女と野獣は個人的にはそこまでタイプの作風の作品ではなかったりします。
そのため世間一般ほど熱く魅力を語れないような気がしますが、それでも人気作品なのは納得のいく構成と描写になっていると強く感じています。
ラブストーリー最高峰と言われている美女と野獣について、どのような点が人々を引きつけるのかを分析・解説いたします。
深く掘り下げされた王子キャラと姫キャラの描写
以前アラジンの記事を書いた際、「王子側のキャラも姫側のキャラも作中でしっかり掘り下げされている上に視聴者が好感を持ちやすい魅力的なキャラになっている」という点を好きなところの一つとして述べました。
それは前年に公開された美女と野獣でも同様のことが言えると思います。
まずベルについてですが、「男性を見た目ではなく中身で判断する女性」という点については恐らくあまり作品を知らない人でも認識していると思います。
個人的にベルは一匹狼っぽいところが一匹狼気質な私にとって凄く好感を持てます。周りから風変わりと言われようが気にせず、村の人達から人気のガストンにも興味無し。読書好きなのも頭が良い人という感じがして憧れます。
でもだからといって決して冷たい人間という訳ではなくて、父親のモーリスや野獣などのキャラの対応などで優しい女性であるということがしっかりと伝わってきます。
同時期に出たプリンセスのアリエルやジャスミンが行動的な性格に焦点を当てられて描写されているのに対し、ベルは歴代プリンセスの中でも割と独特な性格をしていると思います。それ故なのか今なお人気が高いプリンセスとなっています。
髪色も相まってか見た目も比較的大人っぽい感じなので大人の人から見ても憧れの女性像という感じがします。私もベルは自分が子供だった頃よりも今の方が好きですね。
そして野獣についてです。ディズニープリンセス作品の王子キャラって「理想の王子様タイプ」か「行動派で親しみやすいタイプ」であることが多いのですが、野獣はどちらとも違います。
見た目も醜いし性格も乱暴だけど、ベルとの出会いを通じて内面に変化が表れてくるという所謂成長するタイプのキャラです。
このお話の主人公はベルですが、魔女にかけられた呪いや愛の育む過程など物語的にはむしろ野獣を中心に動いています。「姫キャラの添え物」感が否めなかった今までの王子キャラとは一線を画しています。
見た目こそ凶暴ですけれどあまり行動派というタイプのキャラでもなく、むしろ素直で不器用、端的に言えば母性を刺激される系と言えばよろしいでしょうか。個人的にも結構印象に残るキャラでしたね。
ベルもさることながら野獣も珍しいキャラ造形のプリンスだと思います。そしてそのような個性的なカップルだからこそ今でも人気なのだと思います。
この作品の個人的な欠点について
私は冒頭で美女と野獣について「そこまでタイプの作風の作品ではない」と記しました。実際、そんなに好きじゃない点を挙げようと考えたら以下のような点を思いついてしまいました。
1.ヴィランズがショボい
プリンセス作品はマレフィセント、女王、アースラなど偉大なヴィランズが続いていただけにガストンの小物感が際立っています。トレメイン夫人もやっていることはショボいけれど大物感は割とありました。
プリンセス作品の中では比較的カジュアルな作風のアラジンも、ヴィランズは結構大物だったというのに何故アラジンよりも真面目な作風の本作のヴィランズがこんな小物なのか…
恋愛物語を描く上で「人気者だけどうぬぼれ気味」というキャラを悪役にするのは決して悪い判断ではないはずですが、村の人から好かれているせいでどうも悪役という感じがしない。
というか村人達も野獣退治に協力していましたけれど、もしガストンをヴィランズと捉えるならば村人達もヴィランズということになってしまうような気がするのですが、それってどうなんでしょうね。
ガストンはヴィランズあるあるの転落死という結末を迎えますが、もっと無関係の人に迷惑をかけたり、色んな人から「コイツは酷い奴だ」と嫌われているようなキャラにしないと視聴者サイドからしてもラストのカタルシスが得られません。
2.全体的に高貴さに溢れていて親しみやすさに欠ける
お城の中の時間が長いためなのか、何となく豪華絢爛というイメージが漂う本作。それ自体は別に良いとは思うのですが、他作品で言うところのジーニーとかオラフみたいな視聴者サイドに笑いを届けるコミカルキャラみたいのは欲しかったかなとは思いました。
ルミエールやコグスワースなどの家来達がその立ち位置のキャラなんでしょうけどみんな野獣やベルの良き相談役という感じで、「普段はおふざけキャラだけどいざというときストーリーで役立つキーマン」という感じではないように思います。
かといって彼らは癒しキャラという感じもしないし、ちょっと本作はマスコット・脇役枠が弱い印象がありました。
家来達がいなければあの大きな城にベルと野獣しか登場人物がいないことになってしまうため、城らしさを出すという意味でも必要な存在なのは間違いないとは思います。ただちょっと数の多さでごまかしている感も否めず、各家来1キャラごとのインパクトは薄めでした。
3.ミュージカル要素が多すぎる
今までミュージカル要素ほぼゼロ or そんなにないディズニー作品ばかり見てきた私にとって、本作における劇中歌の多さはかなりクドく感じました。
「美女と野獣」は主題歌だし、アラジンでいうところの「ホールニューワールド」的立ち位置の歌だしまあこれは削れないでしょう。
ただ「強いぞ、ガストン」「人間に戻りたい」辺りは正直言って「こんなのに時間使わなくて良いから早くストーリー進めてよ」と感じてしまいました。すぐ終われば多分良かったんでしょうけどまあまあ長いんですよね。
「朝の風景」は良い曲だし、本作における世界観を説明するという意味でも重要な立ち位置なのは分かるのですが、状況を説明するために無理矢理歌の時間を引き延ばしている感が否めませんでした。
視聴者が最も視聴しようと気合いが入っているタイミングである最初がこれって構成的に正直よろしくないです。朝の風景は正直実際の半分くらいの長さで充分だと思いました。
「ひとりぼっちの晩餐会」も正直作中でそんなに必要なタイミングで流れる歌ではないけれど、この曲は個人的に昔から結構好きなので聞けたときは嬉しかったですね。映像が華やかで曲のノリも良いので見ていて楽しいのも◎。
そして何より「夜襲の歌」がかっこよすぎる。この歌を皮切りに物語のクライマックスを迎える感がたまらなく好きです。ヴィランズソングにハマったきっかけと言っても過言ではありません。
このように本作は何だかんだ好きな曲も結構あるのでミュージカル要素を根っから否定するわけではありませんが、もう少し一曲あたりの時間を短くしたり大事な部分だけに厳選した方が良かったと思います。
個人的に美女と野獣を何度も視聴しようと思わない原因の一つがこれです。キャラ達が歌っている最中いつも退屈さが否めなかったです。
教訓がひしひしと伝わる名映画
ちょっと愚痴が多くなってしまいましたが、美女と野獣は「作品を通して伝えたいこと」が視聴者にもしっかりと伝わる、良質な作品だと思います。
「人を見かけで判断してはいけない」ということについては勿論ですが、人に対してどのような態度を取るかで受ける報いが変わるという教訓がよく伝わってきました。
そういう意味ではガストンのようなぱっと見普通の人間で、そこまで悪く見えないけれどベルに対する思いやりが欠けている人物がヴィランズなのは妥当と言えるのかもしれません。マレフィセントみたいな見るからに悪そうな奴がヴィランズだと教訓の説得力が薄まっていた可能性があります。
野獣は最初はわがままで良いとこなしですが、思いやりを持って接することを大事にしてきたのでベルとの愛もしっかり育まれたし、ベルを一旦村に返してからも彼女が助けに来てくれたし、最終的には元の姿に戻ることができました。
横暴という点ではガストンも野獣も似たもの同士だったわけですが、自分を変化しようとしたかどうかで作中での明暗が明確に分かれた感じですね。そういう意味では野獣はある意味ガストンの本来なるべきだった姿と言える存在かもしれません。
何よりラブストーリーとしての描写が秀逸
そして何が良いってやっぱりラブストーリーとしてディズニートップクラスに優秀な点だと思います。
今までのディズニープリンセス作品はみんな一目惚ればかりでした。比較的新しめの作品のリトルマーメイドも結局は一目惚れした男のためにアースラと無茶な契約をしてしまいますからね。
それに対しベルと野獣は最初から仲が良い訳ではなく、特にベルは野獣にかなり嫌悪感を抱いています。
そんな2人が少しずつ心を開いていってそして恋愛関係を築いていくわけですが、最初は悪印象だったにも関わらずそこまで強引・急に仲良くなるわけでもなく、このお互いに対する変化の描写は丁寧に描かれているなと感じました。
ベルが野獣を見直すきっかけになったのは恐らく狼に襲われた際に救ってくれた場面なのでしょうけど、決め手になったのは図書室へ案内するシーンだと思います。
ベルが図書室を凄く喜んでいて、思わず「喜んでくれて良かったねえ」と今までベル視点で見ていた私が初めて野獣視点で感情移入してしまいました。それだけ印象的なシーンということです。
そしてダンスシーンはやっぱり良いですね。ベルって作中でドレスを着る機会が少ないのであのお馴染みの黄色いドレスを着ているというだけでも一見の価値ありです。カメラアングルが上手いので見ている側も思わず2人の世界に入り込んでしまいます。
美女と野獣以降の作品も同様に恋愛はただの一目惚れでは済ませない、練り込まれた描写が増えてきました。
ただアラジンとか塔のラプンツェルとかは恋愛はあくまでストーリーの一要素であるのに対し、美女と野獣はストーリーの主題がラブロマンスなので恋愛物としてこれ以上に優れた作品はありません。恋愛物好きは必見の作品と言えます。
あと感想でやたらよく言われるのは「野獣は人間に戻らない方が良かった」的な意見です。
多分「結局美男美女カップルなのかよ」という感じのことを言いたいんでしょうけれど、ベルは人間に戻った姿に惚れる訳ではなく、逆に野獣の方が良かったと幻滅するわけでもありません。ベルが見た目ではなく、人となりで判断するということをよく表わした場面だと思います。
まとめ
美女と野獣がなぜ世間一般的に人気作品なのかを分析しました。自分なりの感想も込みで考察しましたが、やはり恋愛物として納得のいく描写とよく練り込まれたキャラ造形、作品としての作り込みでしょうね。
ズートピアやアラジンの記事と比べるとやや愚痴の多い記事になってしまいましたが、私も視聴していて楽しかったですし「良い映画」なのは間違いない作品だと感じました。教訓的な意味で子供にもオススメしやすい作品ですし、人気なのも頷けます。
特にディズニーランドにある美女と野獣のアトラクションは話を知っていた方が格段に内容に熱中できますし、今から映画を視聴するのも決して時代遅れではありません。この機会に美女と野獣、視聴してみてはいかがでしょうか?