ナンバリング作品の異端児・ドラゴンクエストⅨについて

ナンバリング作品の異端児・ドラゴンクエストⅨについて

DQシリーズの解説記事、今回はDQ9となります。前回は現時点での最新作であるDQ11について解説しました。

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DQ9って世間一般的にはすれ違い通信で有名になった作品で、DQ3以来となる社会現象作品なんて言われたりしています。通称「まさゆきの地図」はDQ11でネタにされるほどであり、DQ3とは別ベクトルで有名作品と言えますね。

しかしその一方でDQシリーズにしては評判が良くなかったり、叩かれがちな作品だったりします。

ぶっちゃけ私もDQ9はそんなに好きな作品ではありません。ナンバリング作品の中でも下から数えた方が早いです。でも内容的にはガッツリハマる人がいるというのもよく分かるし、DQ10や11の礎になった要素・システムも結構あるんですよね。

DQ9の何が魅力的なのか。逆に何が良くないのか、私なりの考えも踏まえながら述べていきたいと思います。

遊べるハード

「ドラゴンクエストIX 星空の守り人」はDSで遊ぶことができます。というか2023年現在、DSでしか遊ぶことができません。他ゲームハードはおろか、スマホ版すら出ていません。ナンバリング作品で1度もリメイクされていないのはDQ9が唯一です。

そのためDQ9リメイクを希望する声がネット上で常に絶えません。

DQ6も初リメイクがSFC版発売から15年経ってからなのでDQ9リメイクの可能性が全く無い、とは言い切れませんがゲームの特性的に厳しそうという意見も多いです。

すれ違い通信、マルチプレイ、Wi-FiショッピングといったDSならではの要素を活かしたゲームだからということですね。

ただ私としてはこういった要素が無くても、オンラインで再現したり代わりに他の要素を盛り込んだりすれば充分ゲームとして成り立つと思うのでリメイクされたDQ9を見てみたい気がします。

本作は配信による追加クエストで本編で明かされなかった設定が色々分かるシステムになっています。これを全員がプレイできるようにリメイクして世界観をより深堀りしたら面白そうですね。

特に本作のような他の人との交流・やりこみ重視の作風はスマホゲーと非常に相性が良いはずなのでスマホゲー向けに作り直してみるのも面白くなりそうですし、リメイクのアイデアは尽きません。スクエニさんのやる気を是非我々に見せつけてほしいところです!

私の好きなところ、魅力

やりこみ要素の充実ぶり

DQ9最大の魅力といっても過言ではないものがやりこみ要素。コンプリート系が大好きな人には間違いなく刺さるゲームと言えます。

私はそこまでコンプリートしたい人間ではないので軽くしかやっていないですが、それでもクエストはなるべく隅から隅までクリアするようにしたり、転職を何回も行ってスキルポイントを沢山溜めて使ったりと思う存分楽しみました。

特にクエストはDQ10や11にもあるシステムですが、本作が1番クエストの内容が凝っているように感じました。

錬金システムがあるのを活かして錬金をフル活用するような依頼や、ただ「○○を倒せ」というのではない「××という条件で○○を倒せ」といった一捻りある依頼も多く、やり応えがありました。

ただ武器スキルや職業クエストは正直ダルいの多かったですね…「こうらを背負って」「徒手空拳の試練」「武闘家のきわみ」「フォースイメージ」など挙げればキリがないです。

武器スキル・職業クエスト系は報酬的に無視しづらい物が多いのでせめてこれらだけでも難易度は下げてほしかった感があります。

また、「クエストはこんなに要らないから本編に力を入れてほしかった」という意見をネット上でちらほら見ますね。クエストは結構面白かったけれどまあその気持ちは分からんでもない。個人的にDQ11くらいのクエスト内容・量でも充分満足できましたし。

また、宝の地図は良い意味で時間泥棒ですね。本編より強い敵がどんどん出てくるようになるので実質的なエンドレスコンテンツといって過言ではありません。

高レベルの宝の地図や魔王戦は錬金やスキルなどをフル活用してやっと攻略できるというくらい手応えがあるのでクリア後のコンテンツとして不足無しです。

こういった様々な要素はオンラインゲームであるDQ10の先駆け的作品だったんだなと今になって振り返ると感じますね。

キャラクターについて

本作は仲間キャラがいないのでその他NPCキャラについてになります。

まず何かと批判が集まりやすいサンディですが、私はそんなに悪いキャラだと思いません。確かに序盤はかなりウザいですが、慣れてくるのか発言のウザさも癖になってきます。

主人公のことを気にしてくれる発言も多いですし、元々セリフのない主人公の話し相手としてはこのくらい明るいキャラの方が良いです。「重いシナリオでもサンディの明るさに救われた」という意見もネット上で結構見かけましたし。

あと見た目も良いです。私はDQ5のデボラといいギャル系の見た目はそんなに好きではないのですが、タイプじゃないだけでサンディは普通に可愛いと思いますよ。

他には町で出会う人々もいかにもドラクエらしいキャラや好感を持てるキャラが多いです。ただ後述しますが本作はストーリーが印象薄いため、特別悪いキャラではないのにキャラの印象も薄くなってしまいます。

敵キャラでは帝国三将が好きですね。ちょっとアホな脳筋野郎であるゴレオン将軍、所謂フリーザ系統の口調でゲマを思い出すキャラ付けのゲルニック将軍、武人キャラ故にプレイヤー間でも人気のギュメイ将軍。

敵キャラの設定としてはベタかもしれませんが、3人とも非常にキャラが立っていて良かったですね。

正直この帝国三将をもっと目立たせればストーリー的に面白くなりそうな気がしないでもない。

個人的に好きではないところや欠点など

本作は「DQっぽくない」という意見もちらほら見かけます。確かに勇者はいないし、カジノもないし、ナンバリング作品の異端児感はぷんぷんあります。

とはいえクエストやキラキラポイント、新たなステータス(器用さ、魅力、攻撃魔力、回復魔力)など、本作で築いた上に定番化したシステムもあります。良い意味でも悪い意味でも色々と挑戦した作品だったんだなとは感じますね。

ただセーブデータが1つしかないのはどんな目で見ても擁護できませんね…やりこみプレイヤーはどうすれば良いのやら。やりこまないプレイヤーでもRPGでセーブ1個は色々な意味で不安過ぎる。

難易度が低い

本作は難易度が低いとよく言われる印象です。最新作であるDQ11もよく難易度が低いと言われがちですが、個人的に本作の方がより簡単だと感じました。

ストーリーを進める上での詰まりポイントやダンジョンでの難解な仕掛けなども特になく、フィールドやダンジョンのマップも上画面に表示されています。シリーズ初のシンボルエンカウントである点も低難易度化の原因でしょう。この辺りはどれもDQ11にも該当しますが。

1番問題だったのはパッシブスキルが強すぎるところだと思います。パラディンの博愛スキルをマスターするとHP+80、身の守り+100はどう考えても上がりすぎでしょう。これをパラディン転職可能直後に全員に取得させてしまった場合、あっという間にヌルゲー化します。

博愛ほどではないにせよ、戦士の勇敢スキルやバトルマスターの闘魂スキルもかなり上がり幅が大きいです。

ただパッシブスキルを取らなかった場合のボス戦は「少し難易度が低い」程度になるのでそれなりに歯ごたえはあるかと。ギュメイ将軍やガナサダイなどストーリー後半のボスは中々実力的に強いですし。

ラスボスも弱い弱いと言われがちですけれど、状態異常も仕掛けてきますし、パッシブ無しだとこちら側のHPが割と低いので痛恨やマダンテもかなり痛いです。なので世間の評判ほど弱いとも思いませんね。

まあ雑魚敵はストーリー後半でも大して苦戦しませんが…一度に出現する数も少ないし。

ということで、難易度を上げたい場合はパッシブスキル(特にHPが大きく上がるようなスキル)を極力封印するようにしましょう。

2Game

各町ごとのストーリーについて

「DQ9のストーリーってよく覚えていない」という人をネット上で見かける頻度は異常だと思います。恐らくセーブデータが1個しかないのが原因のひとつでしょう。

私は何回かDQ9をプレイしていますが、それでも他作品に比べて何というか薄味に感じてしまいました。

予想していなかった展開が訪れるベクセリア、人間と人形の違いを考えさせられるサンマロウ、シリーズでも珍しく学校が舞台のエルシオン学院など短編エピソードは結構個性的な物やしんみり系の物も多かったです。

本作は主人公が幽霊と話せるという設定持ちであるため、それもあってちょっとストーリーに重たさを含む感じになっています。重い話は私はかなり好きなはずですが…

短編エピソード集という点ではシリアス要素に大きく寄っていて人間の心を具体的に描かれているDQ7の完成度が非常に高いため、それと比べてしまう節があります。DQ9は7と比べて1エピソードごとのボリュームが少ない分奥行きも出ないし、どこか設定や描写もお子様向け・チープだった感が否めません。

特に石の町辺りは上手く深堀りすればDQ7並に深いストーリーを作れそうなのにあれだけで終わってしまうのは勿体なく感じてしまいます。ラボオがどれだけ彫刻に専念したか、クロエとの過去についてなどの回想を用意するとかあっただろうに。

サンディの「人間って、分からないね」という発言は色々な意味で印象的でした。

メインストーリーはどうなのか?

じゃあメインストーリーの方はどうかというと、本筋絡みのストーリーは更に印象薄いんですよね。そもそも本作はDQ3のように仲間キャラを自分で作るタイプのシステムなのでストーリーに全く絡んできません。これがストーリーの微妙さに拍車を掛けています。

キャラゲー好きでキャラクターを特に重視する私にとってこの要素は致命的でした。DQ3が世間一般ほど好きではない原因もこれです。

ストーリーの傾向に関しては主人公が天使、人間の世界にやって来て人助けをしていく展開などいつもと違うDQという感じで最初はわくわくしていました。

ただいつもと違う話を作ろうとした結果、終盤の盛り上がりに欠けた感がありました。今までに比べラスボスは意外性ある相手ですが、それ故に悪役としてのインパクト不足になってしまった感があります。

ラスボスは悲劇性強めの描写になっていましたが、これも個人的にはマイナス。ストーリー途中のボスなら悲劇性のあるボスが少しくらいいても良いけれど、やはりラストは典型的な悪役を倒してスッキリ終わらせたいですね。

今までの作品で言うとDQ4のラスボスも悲劇性はありました。

しかしアイツの場合は序盤から悪役であることを匂わせる要素が多いので「倒すべき相手」とすぐ認識できましたし、主人公に対し許されざる行為をしているので倒すべき悪の親玉という役割を充分以上に担っています。本作のラスボスもこのくらいインパクトがあった方が良かったかと思います。

そもそも私はDQの感想記事で何度か述べていますが、「なるべくEDでゲームをスパッと終わらせたい」タイプの人間なので本編を薄くして代わりにクリア後をメインにするみたいな作風の本作自体がそもそも肌に合わなかったんだろうなとは感じます。

メラミの習得がレベル30という時点で本作がクリア後を重視していることがひしひしと伝わってきます。普通レベル20くらいで覚えるのに…

DQ11もクリア後は長いですけれどあちらはちゃんとストーリーがありますし、無理にやりこまなくても裏ボスを倒せるような構成になっていました。それに対しDQ9のクリア後はひたすら戦闘したりアイテムを集めたりするだけで終わりがないのでやる気が出ない…

こういった諸々の事情が本作のストーリーの印象を薄くしているのではないでしょうか。

BGMが微妙

これも個人的な感想になってしまいますが、BGMがシリーズの中でもいまいちだと感じてしまいました。DQ9以降のナンバリング作品はいずれも「好きなBGMもあるけれど、パッとしないBGMが多いという印象が強い」と思っています。

ただこの記事を書くにあたって改めて本作のBGMを色々と聞いてみましたが、普通に良い曲も多いんですよね。「天の祈り」はもはや説明不要レベルで神曲ですし、町・村・城といった聞く機会が多い曲はいずれも歌いたくなるくらい癖になる曲です。

更に「酒場のポルカ」や「サンディのテーマ」、ラスボス戦BGMなど定番以外の曲も忘れられない曲だらけ。なのになぜ印象が薄いのか…

1つ目の原因としては「確かに良い曲は多いけれど、他作品の曲はもっと好きだから」かなと思いました。例を挙げるならば確かに本作の城は良い曲だけれど、私はそもそも城のBGMは好きになりやすく、もっと好きな城BGM(特にDQ4や6辺り)ばかりリピートして聞いています。

そのため「曲単品で聞けば良いけれど、他作品と比較してしまうと微妙」という感じになってしまい、印象が薄くなってしまったのだと考えられます。町や村の他、洞窟や塔なども同様です。

2つ目は通常戦闘曲・フィールド曲がシリーズの中でも全く印象に残らない出来だからだと思います。何度も聞いているはずなのに未だにメロディーを歌えと言われたら歌えるか不安になる。これといったサビがなくて終始淡々としている印象を受けました。

戦闘繋がりでいうとボス戦BGMもそこまで印象に残りませんでした。私がハイテンポな曲が好きになりやすいという事情もありますが、すぎやまさんの年齢を踏まえると仕方ないのかもしれません。

ただし「他作品の曲と比べると劣っているように感じる」と書きましたが、他作品の曲と比べても遜色のない名曲も少数ながらあります。その例を少し挙げていきます。

1つ目は最初にも述べました天の祈りです。DQ9の名曲と言えばまず挙がる曲なのでわざわざ紹介するまでもないような気がしましたが、それでも全DQの楽曲の中でも上位に来る好きな曲なので触れざるを得ません。

美しくてほんのりと切ない、本作のストーリー展開ともマッチした神曲です。オーケストラ音源だと音色の美しさに更に磨きがかかっていて初めて聞いたときは心に強く響きました。Youtubeなどで聞けるので皆様も是非オーケストラ音源を聞いてみてほしいです。

2つ目は決戦の時です。ラスボス戦で流れるBGMです。先ほど「DQ9は戦闘関連の曲がいまいち」と言いましたが、この曲は文句なしの名曲だと思いました。前作の「おおぞらに戦う」といい、勇ましい系ラスボス戦BGMは大好物です。

途中で序曲のメロディーが入ってくるのは正直反則技使ったな感ありましたが、やはり強く印象に残りますね。言われて気付きましたが、「天の祈り」のメロディーが使われているのもあって、勇ましくもちょっとドラマ性ある雰囲気なのがキャラ的にも合っていて余計好きですね。

ただし私はBGMを評価する際に通常戦闘曲とフィールド曲を特に重視する傾向にあります。ある種その作品の顔とも言える存在ですし。その2つが微妙なのでBGMの評価を大きく下げることとなりました。なのでBGMについては欠点の項目の方に記載させていただきます。

まとめ

DQ9の良いところ、悪いところを個人的な意見全開で記載させていただきました。最初に述べた通りあまり好きな作品ではないので今までの感想記事に比べて愚痴が多くなってしまった感は否めません。

転職・転生・クエスト・錬金・宝の地図・魔王戦などやりこみ要素の多さは目を引く物がありますし、ストーリーやキャラクター、BGMなども充分に”名作”になり得るポテンシャルを持っている作品です。”クソゲー”と野放しにするには勿体ないゲームです。

でも他作品と比べてしまうと、何かパンチが少ないと感じてしまいました。その代わりにやりこみ要素が充実しているのを見て「ああ、これはモンスターズのようなやりこみ型スピンオフ作品やオンラインゲームが好きな人向けのゲームなんだな」と徐々に理解・納得していきました。

それを踏まえると「クリア前までは低め~それなりの難易度、クリア後は一気に高難易度化」という構成は万人受けするゲームを作るDQらしい配慮で魅力的だと感じました。

一度もリメイクされていない作品ということもあってプレイする敷居が最も高いナンバリング作品となっていますが、この記事を読んだ機会に是非プレイしてみてはいかがでしょうか?

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