大逆転裁判シリーズにおける真犯人について
前回の真犯人解説記事から随分と日にちが空いてしまいましたが、今回は大逆転裁判シリーズの解説となります。
大逆転裁判1と2は内容的には2つで1つ、という感じの作品なのである程度まとめて解説しようかなとも思ったのですが、今までの解説記事の流れに沿って今回も分けて解説します。
世間的には大逆裁2の人気が3や検事2と並んで高い印象ですが、私は正直そこまでタイプの作品ではありませんでした。そのため世間の評価と少し解離している部分もあるかもしれません。
その点を承知の上で見ていただけたらと思います。
目次
大逆転裁判1
まず好きな人には申し訳ないのですが、大逆転裁判1は逆転裁判シリーズの中だと私はワースト作品です。
大逆裁1の批判としてよく挙げられるのは「ストーリーが途中で終わる」「大逆裁2ありきの作品」という点ですが、何というかそういった要素関係なしに私の肌に合わなかったです。
今までの記事でも度々「真犯人の魅力が作品のクオリティーに大きく影響する」という話をしてきましたが、それは本作にも通ずるところがあります。要するに真犯人が微妙…
逆裁4も真犯人の印象薄めでしたが、あちらはオーソドックス故の地味さであり、プラスマイナスで言うならばゼロ。それに対しこちらは難点が色々あってマイナス要素が強いです。
本作の真犯人の特徴
本作の真犯人を改めて見て思ったことの第一印象しては女の真犯人が多いなあ、ということでした。
今までの作品は女真犯人は基本1,2人です(逆裁6は3話の夫婦をどちらも真犯人と捉えるのであれば3人?)。それに対し本作は5話中3話の真犯人が女性です。
それもあってか他作品でよく見かける、良い意味でウザい真犯人がいなかった印象。3で言うと哀牙とか芝九蔵みたいな奴らのことです。
あと本作は4同様、これと言った豹変する真犯人がいないのでそれも地味さに繋がっている可能性は否定できないです。豹変する人数で言うと3や検事2もそんなにですが(どちらも作中1人?)、少数ながら豹変のインパクトは滅茶苦茶強い。
あと地味に画期的な点として、未成年の真犯人が初めて登場したということが挙げられます。ニコミナは容姿が大人っぽいのであまりそんな感じがしないですが、15歳と高校生にすらなっていない年齢です。
(よくよく考えてみたら3の4話も未成年でしたな…まあでもあっちは1話で既に真犯人ということが分かっていて、その後4話の回想で再登場という流れなのでまたちょっと違うかなと)
逆裁シリーズは未成年真犯人は何だかんだ出さないと思っていたので思い切ったなあと思いました。ただニコミナは賛否が分かれやすいキャラであり、まだ幼い少女という点が余計賛否が分かれている気がするので次回以降に未成年真犯人を出す場合の改善ポイントにはなりそうです。
本作は大逆裁2に繋がる内容となっているのですが、その割には次回作以降で焦点が当たる真犯人はあまり多くないです。
ガッツリ絡むのはジェゼール、あとはニコミナがその後のことについて少々言及されるくらいです。メグンダルやクログレイに至っては全くと言って良いほど存在の匂わせもありません。
個人的に非権力者系ラスボスが好きな身としてクログレイは続編で少し話が出てきたら嬉しいなと思っていましたが出てこなくて残念。
あとこんなことを言ってしまうのもアレですが、私は検事2が大好きでその理由として「全てのエピソードが最終話に繋がる」という点があります。大逆裁2は評価の高さ並びに1が2の続きであるという点から、検事2ばりに全ての話が繋がると思っていました。
でも結局1で2のメインストーリーに繋がる要素は上述したジェゼール絡みのことくらいしかなかった印象。漱石が被告人になる話(1の4話&2の2話)はどちらも割と好きですが、内容的には箸休めっぽいし。
思ったほど話が繋がってないし、伏線や謎のばらまき方も他作品と比べて露骨感がありやや肩すかしでした。
本作の残念ポイント
私は逆裁シリーズに限らず、「悪役側にもこういう事情があったんだよ~」的なシナリオがあまり好きではないです。「俺こそが悪役だ!お前ら俺を倒せるのか!」って感じの悪役の鑑とも言えるキャラに惹かれるので。
本作の真犯人で悪役っぽかったのはジェゼールとメグンダルのみ。それだけならまだ良かったのですが、これらの話すら結末が微妙だったり設定の割に凄さが伝わってこなかったりと残念感が否めなかったです。
ジェゼールは1話の真犯人としては結構手強い上にちなみを思い出すキャラ付けで最初は好印象だったのですが、最終的には微妙な悪役だったな…という感想になりました。
領事裁判権のせいでやっつけた感が無く、ちなみと違ってリベンジする機会もないまま大逆裁2でただの一般人にあっさりやられるという全くカタルシスのない結末を迎えました。
しかもジェゼール、プロの殺し屋ですよね?その割には油断しすぎではないですか?続編で正体とか犯行動機とかが判明したのは良かったけれど、真相を引き延ばした分がっかり感が強かったです。
メグンダルもジェゼール同様リベンジの機会なくやられてしまいます。というかこの話、マジで(メグンダルが真犯人とある程度察しが付くとはいえ)真犯人も事件の真相も何も分からないまま終わるという開いた口が塞がらないストーリーで個人的に凄く苦手です。
ストーリー的にそろそろ盛り上がりが欲しいタイミングでこのメグンダルの話だったので、これが余計大逆裁1が微妙だな…と感じる原因になってしまっています。
そして本作、「事故だった」エピソードが2つもあります。これも賛否ポイントでしょう。
ニコミナのもやっと感は何というか、逆裁4のマキに抱いた感情に近いものがあります。幼く儚げな少女+境遇の大変さによる同情でプレイヤーの目をごまかそうとしている感じなのが嫌悪感強いです。
殺意はマジで無かったんでしょうけれど、突き飛ばしたのは事実だし。その上で何も知らない風を装われるのでタチが悪いですねホントに。
まあこの話に関しては被害者が被害者である上に成歩堂が容疑者として進むので余計プレイヤーのヘイトがニコミナに向いているのは否定できません。小中みたいな分かりやすい悪役なら良かった。
せめてこういう「勘違いが生んだ悲しい事故」系の話はメインキャラの関係がないサブストーリーでやればマシだった気がします。
4話の「実は事故でした」オチもまあ微妙ですが、この話は漱石とかオマーリ夫婦とかのノリが逆裁シリーズっぽかったし、「事件の真相がしっかり判明して被告人を救う」という基本スタイルはできていたので割と面白かったです。
シリーズで1番薄いラスボスと言われている男
クログレイは本作のラスボスですが、大逆裁1が2を前提とした話ということもあってラスボスとしてどうにも話題に挙がりにくく影が薄いです。
上述した通り非権力者系ラスボスが好きな身としては、クログレイは決して悪いラスボス像だとは思っていないです。ただやっぱりもう少しパンチが欲しいというか、他ラスボスと比べると見劣りしてしまう気がします。
優秀な電気技師になっているくらいですし、根は凄く真面目な人なんだろうなということが伝わってきます。そういう意味で彼は闇堕ち系真犯人と言えます。
個人的に密かに好きなのはティンピラー兄弟との関係ですね。いちいちキザなポーズを取るので「コイツなんやねんw」ってなるのですが、ティンピラー兄弟と並んだときのポーズのしっくり感が異常で「これを踏まえた上だったのか!」と妙に関心してしまいましたw
あとはメグンダルを死に追いやったところ。この悪党に復讐するという流れが検事2ラスボスっぽくてお気に入りです。
まあでもラスボスとしては威厳不足なのは否定できない。威厳が無いのであれば豹変による不気味さや恐怖さ等が欲しかったけれどそれもないし。ある程度同情できる背景があったとしても、もっと悪役らしさが欲しい。「ガハハハ!俺が悪役だ!!」的な感じのノリと言えば良いか。
ハッチを殺したのも偶然というか大きな企みがあった訳でもないし、その程度で作品のトリを飾られても…感。
あとこれはシナリオ構成の問題として探偵パート、法廷パートを1日で終わらせようとしているせいでストーリーにメリハリがなく、長い割にボリューム感がないのもラスボス戦の盛り上がりに欠ける原因。
エンディングに出てきたくらいなので続編での登場は割と期待していました。あれで出番終わりにするには惜しいキャラだと思いますよ。本人の過去をもっと掘り下げるとか、牢獄でティンピラー兄弟とキャッキャしている様子を見せるとか(笑)、美味しいネタはありそうだし。
どうでもいいですが彼が偽名として名乗るエッグ・ベネディクトが正直逆裁シリーズだとそんなに偽名っぽく見えない(笑)。それこそコゼニー・メグンダル筆頭にヤバい名前山ほどいるぞ?
大逆転裁判2
本作の真犯人の特徴
本作は前作と打って変わって、真犯人に関しては歴代逆裁シリーズっぽい男女比率になっていたと思います。
大逆裁1の項目であまりいないと記載した、”逆裁シリーズっぽい、良い意味でウザい真犯人”も本作は割といるのでシリーズファンの人も安心。豆籾とかペテンシーとか。特にウイリアム・ペテンシーは「こういうキャラを待っていた!!」と叫びたくなるような絶妙な動きと発言の面倒臭さでしたねw
本作は目立った豹変はあまり無いですが、結構真犯人のリアクションが大きいキャラが多いのでそれも良き。ブレイクモーションも前作がちょっと地味だったので続編でようやくやりがいがある感じに。
あと逆裁3とかにも言えますが、テーマ曲持ちのキャラが多いのでよりキャラが濃く感じます。個人的には豆籾とドレッバーのテーマ曲がかなり好きで、よく聞いています。
個人的に印象に残ったのは真犯人の1人はビリジアン・グリーンですね。この話自体トリックが複雑に絡み合う、検事2の3話を思わせるようなストーリー展開になっていて好きです。上述したペテンシーもキャラ濃いし。
あまり真犯人に同情とかしたくないタイプなのですが、ビリジアンに関しては正直しゃーないと思ってしまう。
あとあの手の真犯人って「私って可哀想でしょ、同情して」風のキャラが多いので(大分私の偏見が入っていますが)、「あんな奴のために捕まるなんて嫌だ」って感じでハッキリ言い切ったのが個人的に好印象。
本作の残念ポイント
本作に関しても3とか4で見られる、「被害者がアレな人が多くて相対的に真犯人がそんなに悪く見えない」問題があります。
ジェゼールとかメニンゲンとかね。プロフェッサー事件まで含めると玄真、クリムト辺りもか。
玄真、クリムトは根っからの悪人という訳ではないですが。正直本作は「非はあるけれど、完全悪では無い」パターンのキャラが多くてそれが余計やり場の無い感情になります。豆籾に関しても確かにクズですが、ジェゼールに対してむかつくのは滅茶苦茶分かりますもん。
まあ豆籾はキャラとしてはそんなに嫌いじゃないです。マスゴミキャラとして絶妙にヘイトが溜まる感じが良いです。こんな小物がプロの殺し屋を殺れてしまうのはどうなのと思いますが。
シスに関してももっと悪役っぽいキャラ付けで良かったよなあと感じます。ヴォルテックスの右腕的立ち位置ですし。今までの作品でクソ親を散々見てきたせいで狩魔といいシスといい、家族思いなだけで良い親に見える。
結局本作の真犯人ってジェゼールとかシスとか慈獄とか、ラスボスの言いなりになっている人が多くて悪役としての魅力をイマイチ感じにくいという、検事1の葛に似た不満を本作でも抱えることとなりました。
ハート・ヴォルテックスは歴代ラスボスの集大成
本作のラスボスはハート・ヴォルテックスです。大逆裁1の頃から散々、「コイツがラスボスだろ」と言われてきただけあり、ラスボスらしさという点ではピカイチでしょう。
逆裁6のガランも「今までのラスボスのラスボスっぽい要素を色々と寄せ集めた感じのキャラ」と以前表記しましたが、彼に関しては狙っているのかというレベルで6以上に寄せ集め感増し増しです。特に「巌徒みたい」というのは殆どのプレイヤーから言われる有様。
そもそも本作の最終話自体、逆裁1の4話と5話をミックスしたような話ですよね。被告人がライバル検事だし、弁護引き受けまでのやり取りが御剣っぽいし、灰根を思い出すようなミテルモンの境遇、ヴォルテックスの犯行動機が割と巌徒っぽいなど色々あります。
スケールの大きさ、手強さなどラスボスとして不足ないキャラクターになっています。ただ個人的にはガランの方が悪役としては好きかなあ。ヴォルテックスにはもう少しクズさが欲しいと思ってしまいました。ヴォルテックスは悪人っていうよりは歪んだ正義感って感じなので…
ヴォルテックスは最終話では裁判長として法廷に立つということで、「裁判長がラスボス」という新しい構図を生み出しました。
まあ今までも検事、弁護士、被告人、刑事など色々な形でラスボスを生み出してきましたし、特殊な立ち位置にいるキャラの方がラスボスとして印象に残るのでそれを踏まえれば裁判長がラスボスというのも、予想できなかった訳ではないです。
逆裁、検事、大逆裁いずれも2作品目のラスボスは殺人教唆に焦点を当てているのは偶然なのか意図的なのか。人の弱みにつけ込んで操る様は検事2のラスボスとかなり重なる部分がありますね。
また、ホームズの生中継によってトドメを刺される一連の流れは霧人を意識していそうです。ただ霧人の裁判員制度によってあっさりやられる様は正直好きじゃないのでここは正直「うーん…」って感じ。
狩魔や巌徒は証拠品などをフル活用して倒しきるやりがいがあったし、ガランもカンガエルートで発想を逆転してトドメを刺す流れが爽快でした。ヴォルテックスはホームズ頼りになってしまったのが残念。
ちょっと不満も書いてしまいましたがラスボスらしさは抜群だし、逆裁キャラらしいお茶目さも少しあるし、ブレイクモーションも凄まじいし、良い悪いで言えば間違いなく良いラスボス像だと思います。
ここまでラスボスっぽいキャラを描いてしまったら次回作はどうなってしまうんだろう?という不安とわくわくはありますねw
まとめ
大逆転裁判シリーズにおける真犯人の特徴及びラスボスについて解説していきました。
大逆転裁判シリーズは成歩堂龍一らメインキャラを一新して作った作品ということで、ある意味画期的だったと思います。それにも関わらず練り込んだシナリオ、魅力的なキャラクター達で本家にも見劣りしない人気を誇っているのは素直に評価するべき点でしょう。
ただ本作は他作品で見かけられたような、「これがまさか伏線とは…!」といった意外性はそんなになかった印象で、個人的にはそういう意味で3や6、検事シリーズ辺りの方が好きではあります。
本作は結構露骨に「はいこれ後の話で関わってきますよー」と序盤から伏線ばらまいているし、ラスボスがヴォルテックスなのも予想通りすぎるし。
そうは言っても大逆裁2は前作プレイヤーの興味を強くそそられる展開や複雑なトリック、3話から始まる伏線回収など1話1話の面白さは歴代シリーズの中でも結構良かったです。真犯人も濃いし、メインキャラの掘り下げもバッチリでしたし。
大逆転裁判シリーズは2で明らかに完結してしまった感は否めず続編の望みが薄そうですが、本家シリーズ同様続編を待っています。
